子どもの中耳炎

こどもの中耳炎について

1. 急性中耳炎・反復性中耳炎

かぜの後に、突然夜中にぐずる、熱がでる、食欲がない、機嫌が悪い、耳を痛がるといった症状があれば、急性中耳炎の可能性があります。原因はほとんどが、かぜの際に、鼻の奥に潜むウィルスや細菌が経耳管感染(鼻の菌が耳管と呼ばれる鼻と耳をつなぐトンネルを通って鼓膜の奥で感染)を起こすからです。当院では鼓膜をCCDカメラで鮮明な画像として、モニターに映し出して、患者さんや保護者にお見せしています。『百聞は一見に しかず』で、何故、切開が必要なのか、画像を見れば一目瞭然です。また治療後の正常な鼓膜をお見せすることで、保護者の方も安心できます。
当院では基本的に『小児急性中耳炎診療ガイドライン』に則った治療を行っており、鼓膜の発赤と腫脹が著しい場合は、局所麻酔下に鼓膜切開術を行い、膿を排出させます。菌の量が減少するため、抗生剤の効きも良くなり、切開したその日もしくは翌日までに、熱も下がり、機嫌も回復し、食欲も戻ります。お子様は ぐっすり眠れます。
免疫力の未熟な2歳未満、保育園児、薬剤耐性菌(抗生剤が効きにくい菌のことで、その代表はインフルエンザ菌の耐性菌であるBLNARや肺炎球菌の耐性菌であるPRSP)の3つの因子が揃ってしまうと、何回も中耳炎を繰り返す、反復性中耳炎になることが多く、抗生剤だけの内科治療では限界があるため、何回も繰り返し鼓膜切開術を受けることになります、そこで当院では保護者の方とよく相談して、ご希望があれば、局所麻酔下に、シリコン製の鼓膜換気チューブ留置術を行ないます。チューブを鼓膜に留置すれば、中耳の排膿と換気が保たれ、その後、急性中耳炎になる頻度が確実に減ります。当院のデータでは、約80%の症例で、中耳炎の再発を認めませんでした。なお当院では、チューブ抜去後に、鼓膜穿孔が起こりにくい、短期チューブ(1ヶ月~6ヶ月留置)を挿入しています。チューブ挿入後に耳漏が止まれば、月に1~2回の通院で済みます。

2. 滲出性中耳炎

子どもの難聴の原因として、発症頻度が高い疾患です。耳管の機能が悪いために、鼓膜の奥に滲出液が溜まり、難聴になる病気です。耳管がつまり、換気できないために、鼓膜の奥の中耳の圧が陰圧になり、中耳の粘膜から水分がしみ出してくるのです。
耳管の閉塞に、アデノイド肥大副鼻腔炎が関与することも多く、精査にてこれらの合併があれば、同時に治療します。薬による内科的治療で滲出液が引かなければ、局所麻酔下に鼓膜切開術を行い、滲出液を吸引除去します。切開直後から聴こえが良くなります。切開しても、鼓膜が閉鎖して、再発する場合は、局所麻酔下に鼓膜換気チューブ留置術を行い、滲出液が溜まらない状態にします。チューブは長期チューブを使用することが多く、1年~2年間留置することもあります。プールは潜水や飛び込みをしなければ、入っても構いません。10歳までにきちんと治療しておかなければ、その後に真珠腫性中耳炎癒着性中耳炎といって、手術が必要なやっかいな中耳炎に進展することがありますから、注意が必要です。チューブ挿入により、聞こえが改善し、理解力が増すため、「うちの子はこんなに聞きわけが良かったのか」とびっくりされる保護者の方もおられます。こどもの聞こえがいかに重要であるかを物語るエピソードです。

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